のり日記

かけだし神経科学者の留学日記

渡独-43日目

本当は渡独してから開設しようと思ったのだけれどとても印象深い一日になったので今日から始めることにした。

 

ようやく睡眠の研究が執筆段階まで仕上がってきたので、Sさんというナイスガイにお願いして世界的に有名なU田研でセミナーをさせてもらった。

U田研の第一印象は 「地頭の良い人たちの集合体」 という感じで、人柄も素晴らしい方ばかり。実験セットアップも素晴らしく、非の打ちどころのないラボだった。先生も超素敵。あの落ち着き払った雰囲気を自分に出せる日はきっと来ないだろう。

 

さて、自分の発表についてだが、Tononiのシナプススケーリング仮説とconsistentなデータを発表させてもらった。これが先生に火をつけてしまい、おそらく一生忘れられないであろう言葉を言われた。

「面白いから良い論文にはなると思います。でもあなたはきっと3,40年後に恥ずかしい思いをする。なぜなら間違ったものを追い続けているからだ。」と。

どうやらスケーリングをシミュレーションで再現しようとしても全然うまくいかないらしい。だから先生は睡眠の本質はスケーリングではなく、全く違う何かであると考えておられるようだ。

これに関してはどちらが正しいのかはわからない。実際に実験では覚せい時に増強、睡眠時に抑圧という現象が見つかっているわけなので。もしかしたらまだ見つかっていないルールが存在しているだけかもしれないよね。そのルールをシミュレーションに組み込めば再現できるのではないだろうか。

ただ、先生のおっしゃる通り今後も睡眠研究を続けていくのならば脱Tononiしないとオリジナリティのある仕事はできないと思っている。それはここ数年ずっと考えている。睡眠研究入門編としてはとても理解しやすかったので感謝はしているが。

(ちなみにボスにこの話をしたら、U田さんは頭が良いだけでなく直感も鋭いから、当たっているのではないか、とのこと。)

 

もう二言だけ心に残った言葉をメモして終わる。

「たとえばrippleが何かを変化させていることを見つけたのならば、そのカウンターを明らかにする仕事をするべき。下流にそれを検知するシステムがあるはずだから、それを見つける仕事をしろ。タフな仕事になるとは思うけどね。一細胞レベルの変化でもよいし、分子レベルの変化でもよい。しっかりと実体を捉えていくことが必要。」

分子生物屋の鑑とも言えるお言葉。肝に銘じます。

「研究はfactを元に進めていくべきであって、先語ってはいけない」

考えがデータに先行するのは、悪いことではないとは思うけど。バランスが大事なんだろうな。

最高の一日だった。