しろ日記

かけだし生物学者の留学日記

192日目その2

研究メモ
自分が今後必要とするスキル、または人の力を借りねばならない手技

免疫染色
in vivo記録
Virus投与
シミュレーション

今の実験と合わせて全部一人でやると死ねるな…。一昨年だったかScanzianiのラボの中国人が、たった一人でNature のArticleを完遂させていたが、あれは化け物だな。

192日目

この半年間、仏の心で過ごしてきたので、人にどんなお願いをされようとYesと答えてきた。また、元々好戦的な性格にも関わらず、争いは一切避けてきた。日本にいた時の自己中ぶりはどこへ行ったのかというくらいに善い人、自分。

しかし、昨日、今日はついに避けられない問題が発生してしまい、悶々としている。

 

1.vsドイツ人のまーせる君(結構年上、ポスドク、実験物理のPh.D

基本的に彼は意地悪。教えてほしいことがあって、could you give me a second?と聞いたら1, 0. Bye と言って本当にその後無視してくるような人。だから関わらないようにしていたのだが、一昨日ずかずかと僕の実験室に入ってきて使用中のポンプを持っていかれそうになった。はぁ?ふざけてんの?と聞いたら「このポンプは元々おれのだ。サムがおまえにやったのか知らないけど元々は俺が所有者だ」、と主張を始めた。こいつの説明は的外れなのだが、まぁ全ての装置はジルのものだし、シェアするべきかなと思ったのだが、よく考えたら誰も使っていないポンプが大実験室に転がっている。それを使えよと言ったら「あれはマークのだから使わない」という意味不明な説明が始まった。マークはすでにこのラボから去ってPIとして独立している。まだたまに追加実験をしに戻ってくるらしいのだが、あのポンプはほとんど使っていない。理由にならないぞと言っても頑なに奪おうとしたので、マークのを使え、触るなと言って追い出した。さっき聞いた話によるとロレンツのところにも来たが彼もマークのを使えと言って追い払ったらしい。

そしてその二日後の今朝、実験室に来てみたら、なんとポンプがなくなっていたのである。マークのは転がったまま。さすがに頭にきて直接伝えることにした。証拠を残すためにメールで、しかもミカエラ(技術部門の長)にccした。「なぜおれの許可を得ずに使ったの?マークのを使えと言っただろ? ちなみにそのポンプ、昨日毒をいっぱい使ったから今日洗おうと思っていたけど、君の標本生きてる?」と。すごい反抗メールが返ってくるかなと思ったら、意外にも「I'm sorrry,but~~」と、なんと謝ってきた。ミカエラへのccが効いたと思われる。彼が謝ってくるのは初めてだったので、その後の言い訳は意味不明だったけど許すことにした。で、廊下ですれ違うときにHi、と挨拶をしてきた。初めてだったのでとても驚いた。

要するに今までおれが何も主張をしない格下だとなめられていたという結論に至った。これからも言いたいことは伝えよう。

ていうかどんだけマークが怖いねんwおれ彼にshut up と言って黙らせたことあるんだけど実はやばかったのかな。

ちなみに彼は謝りながらもポンプを返却していない。


 

2.vs台湾人夫妻

彼らとは研究上の駆け引きみたいな感じ。元々悪い人たちではないし、基本親切なのだが、日に日に妻の研究が僕に似てくるのを感じていた。だから来週の自分の発表においてこの研究は自分のだということを先に皆に伝えられればと思っていた。

しかし、驚いたことに昨日の夫の発表において、なんと夫が妻のデータを発表し、構想を話すという、驚くべき事態が発生した。その構想、やはり見事に自分の研究とリンクするの。すごく落ち込んだんだけど、放っとくわけにもいかないからさっき妻に直接なぜ夫がそのデータを発表したのか聞いてきた。すると、夫は自分のデータがなかったから私のを発表しただけよ、とのこと。それはそれで奇妙な話ではあるが、そう言われたら言い返すこともできないのでもう一つの質問をした。おれと将来競合すると思っている?と。すると、競合というか、コラボでいいじゃん?私はECでもセカンドでも、学位がとれればかまわないよ?との返答。それを聞いて彼女の行動がようやく理解できた。まさか筆頭著者じゃなくでよいとは。だからと言って安心して気を抜いたら全部もっていかれるので、トップスピードで引き離す所存。そして、おれの予想ではこの仕事の2ndはおそらく他の人になるかな。


どちらもタフなイベントではあるし、解決したわけではないが、成長させてくれると思って頑張るぜ。

これからも、常にpeacefulな心を保ちながらもグイグイ主張する。

 

 

 

189日目

日本の気候はどうですか?こちらは早くもすっかり秋になって超快適だよo(`ω´ )o(K○miya的挑発(内輪ネタ))


料理

今日は考え事をするために、昼から鶏の脚を解体していた。

ささ身はとても充実しているのだが、こっちには日本での必需品である鶏もも肉が売られていない。なので鶏ももが食べたければ自分で骨を外してカットしなければならないのだ。

昼は太めのネギとともに焼き鳥を作り、余ったパーツを長時間煮込んで鶏がらスープを、夜はそのスープをベースにした親子丼を、それぞれ作ってたらふく食べた。美味しかったのだが親子丼は醤油と白ワインの香りが強く、時間をかけて作ったスープの恩恵を余り感じなかった。

しかし久々にジューシーなお肉を食べたのでとても満足。


家庭菜園

随分書いてなかったけど、初心者にしてはかなりうまくいったと思う。トマトは永遠に鈴なり状態、さやえんどうもたくさん収穫でき、バジルは放っておいてもたくさんその葉っぱを供給してくれた。

唯一の心残りがズッキーニで、結果的に二本しか収穫できなかった。まず雌花と雄花が同タイミングで咲く必要があり、さらには自分で受粉させてもうまくいかないことがほとんどなのだ。20回ほど受粉にトライして、成功はたったの2回。10%の成功率とはどういうことなんだ。超単純作業のはずなのに、何かを間違えているのだろうか。

しかしスーパーにトマトもズッキーニもいっばい売られているので、来年はシソや大豆など、日本的なものの育成に努めようと考えている。


論文

某ジャーナルから未だに返信が来ない。はや12週間、三ヶ月が経過しようとしている。周りのポスドクも少しざわつき始めた。尊敬するI藤先生や、他のリーダーに過去にこういう経験はありましたか?と聞いてみたら、ないとのこと。可能性は二つで、一つは競合者による妨害、もう一つはback to backで出版したいがための時間稼ぎではないか、とのこと。後者なら最高なのだが、僕は前者だと思っている。自分の領域のエディターはかの○ックマンラボの出身なので、その人たちに肩入れしている雰囲気は常々感じる、と、ザッ○マン一派のポスドクから聞いた。

ということで催促メールを送ってみたらどうかと言われたのでボスに連絡してみようと思う。

しかし三ヶ月はないわー。来年のフェローシップの申請に間に合わなかったらつらいな。これで落とされたらこの雑誌まじで嫌いになる。


研究

順調。この前見せたデータがボス的にヒットしたらしく、最近むこうから進捗は?来週ミーティングするぞ、とプレッシャーをかけてくるようになった。それが目標だったのでとても嬉しい。しかし、次のプランを巡って完全対立。前にも書いたように、ボスは僕と違って人工的な操作が大嫌い。だからLTP誘導という、超超超基本的な実験すらやらせてもらえないのが辛い。こっそりやるかな。

ちなみに僕はある現象の役割が知りたいのだけれど、ボスはある現象が生まれる根本原理、大原則が知りたいそうな。だから頻繁にぶつかる。先週は論理が飛躍している、役割を知るためにはまずメカニズムを知るべきでしょう、だよね?と二時間詰め寄られ続けた。ずっと座って話してたのに、疲労がすごくてその後歩けなかった。


サムはおまえの研究なんだからおまえが全て決めてよいと言ってくれるけど、このままボスに染まってみたい気持ちもあるんだな、これが。悩ましい。



気付けばこちらに来て半年が経っていた。早すぎる。言語能力よ頼む向上してくれ。


169日目

現ラボからは論文があまり出ない。
理由の一つとして、扱っている研究対象が難しく、攻めあぐねているということはあるのだが、最大の理由はボスの考え方にある。

先に前ラボ(UTの方)の話をしておこう。前ラボのボスは、論文を驚くべき早さで量産していた。ハイインパクトな研究から、???と思う研究まで、全て、だ。その理由はとても納得のいくもので、科研費を使って行った研究である以上、実験データを全て世に公開することが何よりの誠意だと、そう仰っていたのを聞いたことがある。素晴らしい、の一言だ。これ以上の振る舞いはないのではないか。


一方で、ジルはたとえデータが溜まっていても論文を書かない。その研究がサイエンスを大きく前進させるという確信がない限り投稿しないと決めているのだ。たとえポスドクがデータを大量に持ってきても、平気で切り捨てる。データがあったのに論文を出せず、アカデミアの世界を去った人が何人もいると聞いて、はじめは怖くなって震えていた。
前ボスの方が大衆への理由も全うだし、ポスドクや学生のためにもなるような気がする。ジルはなぜインパクトの低い、小さな仕事を論文にしないのだろう。
その理由は、ジルがジルであるから、だそうだ。ドイツ国は、ジルに、ジルにしかできない仕事をしてもらうことを期待して巨額の投資をし、MPIのヘッドとしてアメリカから引っ張ってきた。小さな論文を書くことなど誰も望んでおらず、とにかくすごい仕事をしてほしい、というのがお上の意向、そして民意らしいのだ。小さな論文を書いている時間があったらその時間を使って探索実験の時間を増やし、大きな仕事を発芽させることに注力すべきだと、本人も考えているらしい。この考えにもすごく納得がいった。
また、その研究機関から出た論文中の何%がハイインパクトジャーナルか、という数字もその研究機関のレベルを評価する上で重要な指標となっていると聞いた。ちなみに昨年はR研が5%、MPIが6.5%で、どちらも世界ではかなり上位につけているらしい(←M本理事長から直接聞いた)。R研の前センター長が、Neuron以上じゃないと価値がない、と言い続けていたのはそういう理由もあったのかもしれない。

前ボスとジル、どちらもサイエンティストのお手本のような指導者だ。自分が将来どうなっているかはわからないが、もしかしたら小さな仕事しかできないような研究者になっていることだってありえるが、科学を前進させられるような仕事ができるよう、腐らずに頑張っていきたい。

163日目

今あきれ果てています。もうね、ドイツはインターネット会社が最悪なんですよ。

先々週Telekomという会社とインターネット契約をして、その開設日が8/9、つまり明後日の予定だった。前回(※)と違ってきちんとした日程の確認メールも来た。

し か し

ドイツのインターネット会社はどこもふざけているという話を多方面から聞いていたので、念のためロレンツ君にサービスセンターに電話してもらった。すると、

「あー、おたくの接続開始日はー、、早くて9/18ですねー。」だと。

ロレンツに通訳してもらいながらブチ切れ。やはりおまえも他社と一緒かと。そしたらロレンツが言ってくれた。メールに8/9と明記されとるやんかと。すると、

「それはそちらが選んだ希望日です、Sir」と。

確かに開設希望日の選択肢が現れて、8/9をクリックした。でもまさかそれがただのこちらの希望を伝えるだけの日程だなんて思いもしなかった。信じられない。"Sir"が"さぁ ┐(´・ω・`)┌" に聞こえて怒り増幅ですよ。しかも早くて9/18だからな。これ以上遅くなる可能性が十分あるわけですよ。

電話後ロレンツが、おれもまだ繋がっていないし、気長に待つしかない。と言ってきて驚いた。そう、ロレンツはvodafoneと契約したのだが、むこうに無断で先延ばしされて、かれこれ半年間ネットに繋がっていないのだ。毎月毎月予定日にブッチされ、電話をしたら一ヶ月先延ばしされ、を繰り返しているらしい。

 

これさ、日本企業チャンスなんじゃないの。同じ額でもジャポン式サービスを導入するだけで独占市場を築けるよ。お父さん犬グッズとか展開しないでいいから海外進出して!

てことで来月ラボミーティングがあるのにオンライン英会話できず。萎えた。

 

 

(※1)すでに1&1という会社で一度失敗している。キャンセルしたら大慌てで対応を始めようとしたが切り捨てた。

 

 

159日目

朝からボスとマンツーマンディスカッション。かれこれ二ヶ月ぶり。緊張するけど至福のひとときである。相変わらず自分の英語はひどいけど、伝えたいことは伝えられるようになってきた。まだまだこれから。

自分がジルを指導者として選んだ最大の理由は、彼の論文が提示する問いの質と、もたらす解のエレガントさにある。その問いはどうやって生まれるかというと、すべて探索実験からである。一切の仮説を持たず、ピュアな気持ちでデータを眺める。そうやって、解き明かすべき問いを何もないところから炙り出すのが他の研究者よりも圧倒的にうまい。

 

ちなみに今日聞いた、ジルスタイルの研究者になるために、教わった大事なことをメモ

1.実験は何例やるべきか

ジル曰く、新しいものが見つからなさそうだと思った時点でその実験をやめて他の事をやるのが探索実験の基本だそうな。だから、今は3-5例で十分だと。そして、論文にする時にストーリーが出来上がってから例数を足す。ちと二度手間な気がするけど、時期が空いても再現がとれるわけだから安心できそうではある。

2.視野は広く

今日、ある現象が生じる理由について、データとともに一つの仮説を持って臨んだのだけれど、そのようなことを考えたことがなかったから持ち帰って考えてみると言ってくれた。だが仮説にとらわれて、探索をやめることはしない方がよいと言われた。むしろ似たような探索実験を多角的にやって、自然にその仮説にたどり着くような攻め方がよいと。要するにもっともっと実験して俺を納得させろと、そういう風に言っているように感じた。

3.非生理的な実験はやめとけ(専門的なので読み飛ばして)

例えばテタヌス刺激でLTPを誘導する実験などは、ジルは大嫌い。況やオプト実験をや。生理的に起こっている現象を観察して、考察して、答えを導くのが基本だそうな。そういう考え方が本当に好き。そういえばBrechtもオプトは使わねーって言って拒絶し続けているらしい。完全拒否はどうかと思うけど、彼らの哲学はとても大事だと思う。継承したい。

 

さて仕事に戻る。

 

156日目

先月、アパートのインターネット接続を大家さんに切られてしまったため、全然更新していなかった。理由はまた後日書くが、人に部屋を貸して、そいつが違法ダウンロードをして賠償請求が来たせいです。だから仕方ない。ちなみに今はラボ。

 

気を取り直して近況をば。

 

研究について

順調(すぎるくらい)。すごく面白い現象を偶然見つけて、勝手に一人で興奮している。ロレンツに教えたら彼も再現できたから、かなり固い現象だろう。論文はまだまだ遠いけど、学会発表くらいならさせてもらえそうだ。来年のFENS@ベルリンかな。今薬理実験に取り組んでいて、それが終わったらゴリゴリの電気生理実験を行っていく予定。オプトもやったほうがいいのかな。まだボスには話していないので、反応が気になるところ。だがプライオリティを得るためにある程度データを溜めてから話しに行く。

 

ちなみに論文は二ヶ月が経とうとするのに一向に返事なし。トップジャーナルに査読してもらった経験がほとんどないからわからないのだけれど、二ヶ月って普通なん?ズッキーニを種から育てて収穫できてしまうほどの時間だよ?旬が過ぎちゃうよ?

 

言語

ドイツ語はほぼ無。かといって英語もほとんど成長せず。ネットがないからオンライン英会話ができず、矯正してもらえないのが辛い。

 

日本

学会発表のために先々週に一週間行って来た。気候は蒸し風呂状態で毎日バテバテだったけど、やはり食べ物は本当に美味しい。鮮明に記憶に残っているのはうなぎの蒲焼とすき焼き、そしてモロヘイヤのお浸し。うう、もう食べたい。学会発表はそこそこかな。M関先生とあと一名から重要なコメントをいただいたが、あとは賑わっていたわりにアドバイスはほとんどもらえなかった。ていうか最前列に無言でずっと立っている若者がたくさんいたのだけれど、どうやって捌けばよいのだろう。

夜はサム君のロビー活動のお手伝い。サム君の紹介を口実に、いろんな偉い先生に話しかけることができたので、ある意味こちらとしても有意義であった。

あとは母校の後輩たちと飲みにいけてよかったかな。みんな大変そうだった。今思い返すと日本での悩みってこちらにはないものばかりだな。特に人間関係の悩みが多すぎる。みんなせっかく良い頭脳を持っているのだから、忘れるなり逃げるなりしてサイエンスに注ぎ込んだ方がよい。自分はこちらに来て本当によかったと思っている。おそらく、90%くらいはサイエンスに集中できている。残り10%は家庭菜園。

 

来客

先週は日本からうれしい来客が。もう帰ってしまったのだけれど、楽しかったので喪失感がやばい。プチ鬱状態。(←だから元気を出すためにブログを書こうと思った)

 

てな感じでインターネットが復活したらまた書きます。